政府と日本銀行を一体のものとして考える「統合政府」という視点を持つと、利払い費の見え方はガラリと変わります。
結論から言うと、日銀が保有している分の国債の利払いを「帳消し(相殺)」して考えると、現在の政府の実質的な利払い負担は、予算上の数字よりもはるかに少ないということになります。しかし、金利が上昇し続けると、別の形で結局は国民(政府)の負担が増えるという厄介なカラクリがあります。
具体的にどういうことか、分かりやすく解説します。
1. 「帳消し」になるカラクリ(国庫納付金)
現在、発行されている日本国債の約半分(50%強)は日本銀行が保有しています。 政府は毎年の予算から、日銀に対してももちろん利子を支払いますが、日銀は政府の認可法人であり、特殊なルールがあります。
国庫納付金のルール: 日銀は、受け取った利子などの収益から、日銀自身の経費や必要な積立金を差し引いた「利益のほぼ全額」を、国庫(政府)に返還しなければならないと法律で決まっています(これを国庫納付金と呼びます)。
つまり、政府が日銀に利子を払っても、回り回って政府の収入(税外収入)として戻ってくるため、実質的な利払い負担はゼロ(帳消し)になります。 したがって、現在政府が本当に負担して外部に流出している利払い費は、民間(国内の銀行や生保、海外投資家など)が保有している残り半分の国債に対するものだけです。
2. では、金利上昇は痛くないのか?(隠れた罠)
「なんだ、じゃあ金利が上がっても半分は帳消しだから大したことないじゃないか」と思いたいところですが、そう問屋が卸しません。ここで問題になるのが、「日銀当座預金」への利払いです。
日銀が大量の国債を民間銀行から買い取った際、その代金は民間銀行が日銀に持っている口座(日銀当座預金)に振り込まれました。現在、この日銀当座預金には莫大なお金(約500兆円)が積み上がっています。
金利が上昇するということは、この当座預金に対しても、日銀は民間銀行へ高い利子(付利)を払わなければならなくなるということです。
ここに致命的な「逆ざや(赤字)」のリスクが生じます。
日銀の収入(固定金利): 日銀が過去の異次元緩和で爆買いした国債は「超低金利(ほぼゼロ)」の固定金利です。金利が上がっても、日銀が受け取る利子は増えません。
日銀の支出(変動金利): 一方で、民間銀行の当座預金に払う利子は、政策金利の引き上げに伴ってすぐに上昇します。
3. 「帳消し」にした後の最終的な結末
金利が本格的に上昇すると、以下のような連鎖が起きます。
日銀が民間銀行へ支払う利子(支出)が急増する。
日銀が受け取る国債の利子(収入)は低いままなので、日銀の利益が激減、あるいは大赤字になる。
日銀に利益がなくなるため、これまで政府に戻ってきていた「国庫納付金(帳消し分)」がゼロになる。
政府から見れば、毎年アテにしていた税外収入(数兆円規模)が突然消滅することになる。
結論としてどうなるか
日銀への利払いを帳消しにして「統合政府」として見れば、見かけ上の国債の利払い費自体は相殺されます。しかしその代わり、「日本銀行から民間銀行への莫大な利払い」という形で、政府・日銀グループ全体から民間へとお金が流出することになります。
結局のところ、日銀の利益が減って国庫への返還金がなくなれば、政府はその穴埋めのために「増税」「歳出削減」「さらなる国債発行」のいずれかを迫られます。「日銀が国債を持っているから利払い費が増えても大丈夫」というほど必ずしも正しい話ではなく、金利上昇のツケは、回り回って確実に政府(=国民)の負担としてのしかかってくる構造になっているのでで、注意が必要です。
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