公安調査庁が毎年発行している『内外情勢の回顧と展望』において、中国などの外国勢力による沖縄へのアプローチが最も具体的に指摘され、話題となったのは平成29年(2017年)版の報告書です。
同報告書などで指摘されている「中国側のアプローチ」の具体的な内容は、主に「学術交流や歴史認識を隠れ蓑にした世論形成と分断工作の懸念」です。具体的には以下の3点が指摘されています。
1. 「琉球帰属未定論」の提起と拡散
中国の国営メディアや関連機関が、「沖縄が日本に帰属しているという法的根拠はない」とする「琉球帰属未定論」を意図的に持ち出していると指摘されています。
具体例: 中国共産党の機関紙「人民日報」系のメディア(環球時報など)が、「琉球の帰属は未定であり、琉球を沖縄と呼んではならない」といった趣旨の論文や記事を掲載し、中国国内および国際社会に向けて発信している状況が確認されています。
2. 「琉球独立」を掲げる団体へのアプローチ(学術交流)
これが最も核心的な部分です。直接的な政治・軍事工作ではなく、大学やシンクタンクといった「学術機関」を窓口にしている点が特徴です。
具体例: 「琉球帰属未定論」に関心を持つ中国の大学やシンクタンクが中心となり、「琉球独立」や沖縄の自己決定権拡大を標榜する日本国内(沖縄)の団体・関係者に対して接触を図り、シンポジウムの開催などの「学術交流」を深めていると報告されています。
3. 目的は「日本の分断」と「沖縄での世論形成」
公安調査庁は、こうした中国側の動きについて、単なる純粋な学術研究にとどまらない可能性を指摘しています。
分析: 中国側の背景には、沖縄の人々の間に日本国(本土)に対する不満や遠心力を植え付け、「日本国内の分断」を図ること、そして「中国に有利な世論を沖縄で形成する」という戦略的な意図が潜んでいる可能性があるとして、警戒を呼びかけています。
重要な補足と留意点
この公安調査庁の指摘を読む上で、いくつか重要な留意点があります。
対象は「独立派」であり「基地反対派全般」ではない 中国側がアプローチの主なターゲットとしているのは「琉球独立」などを主張する一部の団体や関係者です。抗議船の転覆事件で話題に出た「辺野古の基地建設に反対する市民運動(オール沖縄など)」の全体像とは異なります。
「資金提供(直接のテロ・破壊工作資金)」とは別次元 報告書が指摘しているのは「シンクタンクを通じた思想的・学術的なアプローチ」や「メディアを通じた情報戦」です。スパイ映画のように、反対運動の現場に中国政府の工作資金が直接投下されてデモ隊を雇っているといった、直接的な資金援助を認定したものではありません。
【総括】 公安調査庁が警戒しているのは、中国が「沖縄の歴史的経緯(琉球王国など)」や「基地問題に対する本土との温度差」という日本社会の構造的な隙(すき)を突き、学術交流やメディアを通じて巧妙に分断の種を蒔こうとしているという「情報戦・影響工作(インフルエンス・オペレーション)」の側面です。

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